うさぎのスナッフルとは?症状と治療の基本知識
うさぎに多い呼吸器の不調「スナッフル」について、くしゃみや鼻水などの症状、考えられる原因、動物病院での診察の流れをわかりやすく解説します。

うさぎさんのスナッフルとは、くしゃみ・鼻水を主症状とする上部呼吸器の炎症の通称で、パスツレラ菌(Pasteurella multocida)が主な原因菌とされています。抗菌薬による治療は最低でも2〜4週間続くのが一般的で、「数日で鼻水が止まったからもう大丈夫」と自己判断でやめると再発しやすい病気です。この記事では、初期サインの見分け方から、家庭でできる再発予防までを整理します。
スナッフルとは何を指す言葉か
スナッフルは正式な病名ではなく、鼻や副鼻腔などの上部呼吸器に炎症が起きた状態を指す通称です。獣医療では鼻炎(rhinitis)として扱われます。
主な原因菌はパスツレラ菌ですが、それだけではありません。MSD獣医マニュアルは、緑膿菌、気管支敗血症菌(ボルデテラ)、ブドウ球菌、レンサ球菌なども分離されると記載しています。つまり「スナッフル=パスツレラ」と決めつけず、原因菌を調べたうえで薬を選ぶことに意味がある病気です。
症状は初期と進行後で大きく変わる
早期に気づけるかどうかは、初期の「くしゃみが少し増えた」段階を拾えるかにかかっています。進行後のサインが出てからでは、治療期間も長引きやすくなります。
| 段階 | 見られるサイン | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 初期 | くしゃみの増加、透明〜白っぽい鼻水、前足で鼻をこする | 数日続くなら受診 |
| 進行 | 黄色〜緑色の濃い鼻水、ゼーゼーという呼吸音、目やに・涙 | 早めに受診 |
| 重度 | 食欲低下、元気消失、呼吸が苦しそう | 当日中に受診 |
初期のサイン
- くしゃみが増える
- 透明〜白っぽい鼻水が出る
- 鼻をピクピクさせる回数が増える
- 前足で鼻をこするため、前足の内側の毛が湿ったり固まったりする
前足の内側が汚れていないかは、家庭でできる最も分かりやすいチェックポイントです。MSD獣医マニュアルも、鼻をかく動作によって前足の内側に分泌物が固着する所見を典型例として挙げています。
進行した場合のサイン
- 鼻水が黄色や緑色っぽく濃くなる
- 呼吸のときにゼーゼー、ズーズーといった音がする
- 目やにや涙が増える(涙の通り道である鼻涙管に炎症が及ぶことがあります)
- 食欲が落ちる、元気がなくなる
食欲が落ちている場合はうっ滞の併発にも注意が必要です。うさぎさんは丸1日食べないだけで消化管の動きが止まることがあるため、呼吸器の症状と食欲低下が重なったら緊急度は一段上がります。
発症・悪化の背景にある要因
スナッフルは「菌がいるから必ず発症する」病気ではなく、免疫を落とす要因が重なったときに表面化するタイプの感染症です。だからこそ環境側の対策に意味があります。
- 細菌感染(パスツレラ菌など)
- ケージ内の換気不足やほこり、アンモニア臭などの環境要因
- 牧草の粉じんやハウスダストによる刺激
- ストレスや免疫力の低下
- 歯の不具合(歯根の炎症が鼻腔に影響することがあるとされています)
とりわけ見落とされやすいのがアンモニアです。ふん尿が溜まった環境では空気中のアンモニア濃度が上がり、呼吸器の粘膜を刺激して感染しやすくなると指摘されています。掃除の頻度は治療の一部と考えてよく、具体的な手順はうさぎケージ掃除の頻度は?にまとめています。
歯の不具合が背景にある場合もあるため、うさぎの不正咬合の兆候がないかもあわせて確認しておくと安心です。
動物病院での診察と治療の進み方
治療の中心は抗菌薬で、投与期間は最低2〜4週間が目安とされています。犬猫の感染症より明らかに長く、ここが飼い主さんの誤解が最も生まれやすいポイントです。
動物病院では次のような診察・検査が行われることがあります。
- 視診・触診による全身状態のチェック
- 鼻水や分泌物の性状の確認
- レントゲン検査による副鼻腔や歯の状態の確認
- 必要に応じた培養検査・薬剤感受性検査による原因菌の特定
治療方針は個体の状態によって異なります。市販薬やほかのうさぎさんに処方された薬を自己判断で使うことは避けてください。また、抗菌薬は症状を抑えても体内から菌を完全に排除できるとは限らず、ストレスがかかったタイミングで再燃することがあるとされています。「見た目が治った」と「治療が終わった」は別物として、指示された期間は通いきることが大切です。
家庭でできるケアと再発予防
治療と並行して飼い主さんができるのは、呼吸器に負担をかけない空気環境をつくることです。
- ケージ内をこまめに掃除し、ふん尿を溜めない
- 1日数回換気し、ほこりや湿気がこもらないようにする
- 牧草は粉の少ないものを選び、粉じんが多いロットは振るってから与える
- 温度・湿度の急激な変化を避ける
- ストレスの少ない生活環境を心がける
牧草の粉じんが気になる場合は、種類を変えることで改善することもあります。牧草の種類と選び方も参考にしてください。これらは治療の代わりにはなりませんが、再発の間隔を延ばす助けになると考えられています。
鼻水と一緒に目やにが出ている場合は、目のトラブルとしての見方も必要になります。うさぎの目やにの原因と正しい対処法もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. くしゃみが1日数回あるだけでも受診したほうがいいですか? A. 数日続くようなら受診をおすすめします。牧草の粉やほこりによる一時的なくしゃみもありますが、初期のスナッフルとの区別は見た目だけでは困難です。前足の内側が湿っている、鼻水が出ているといった所見が加わったら、早めに相談してください。
Q. 治療にどれくらいの期間がかかりますか? A. 抗菌薬の投与は最低2〜4週間が目安とされています。慢性化している場合はさらに長引くこともあります。期間は原因菌や重症度によって変わるため、獣医師の指示に従ってください。
Q. 一度治ってもまた再発するのはなぜですか? A. 抗菌薬は症状を抑えても、体内から菌を完全になくせるとは限らないためです。ストレスや環境の悪化がきっかけで再燃することがあると報告されています。再発を減らすには、投薬をやり切ることと、掃除・換気を習慣化することの両方が必要です。
Q. 多頭飼育の場合、隔離は必要ですか? A. 隔離の要否は原因菌や同居うさぎさんの状態によって変わるため、獣医師に確認してください。少なくとも、食器・給水器の共用を避け、掃除の頻度を上げることは家庭ですぐできる対策です。
参考文献
スナッフルの原因菌、抗菌薬の投与期間、家庭での衛生管理については、以下の一次情報を参照しています。治療内容は個体の状態によって異なるため、実際の判断はかかりつけの動物病院にご相談ください。
- MSD獣医マニュアル「Bacterial and Mycotic Diseases of Rabbits」— 鼻炎(スナッフル)の原因菌と、抗菌薬でも感染を根絶できない場合があることについて https://www.merckvetmanual.com/exotic-and-laboratory-animals/rabbits/bacterial-and-mycotic-diseases-of-rabbits
- House Rabbit Society「Pasteurella: Its Health Effects in Rabbits」— パスツレラ菌がうさぎの健康に及ぼす影響について https://rabbit.org/health/pasteurella-its-health-effects-in-rabbits/
- Rabbit Welfare Association & Fund「Rabbit Snuffles」— 抗菌薬の投与が最低2〜4週間になること、生活環境の消毒と保温について https://rabbitwelfare.co.uk/rabbit-snuffles/
くしゃみは軽く見られがちですが、うさぎさんにとって呼吸器のトラブルは体力を静かに削っていくものです。「最近くしゃみが増えたな」と感じたその日が、いちばん治療が軽く済むタイミングかもしれません。迷ったら早めに動物病院へ相談してください。
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